パチンコ店が宗教施設に | ||||
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我が国の固定資産課税は不動産の時価に基づいており、基本的に、その時価は3年に一度見直すこととされている。確か、今年がそれにあたるはずであり、私としてはこれまでかなりの数の固定資産評価裁判を扱っていたせいもあり、昨年来のコロナ禍で致命的ともいえるビジネス環境の激変を経験したビジネスホテルや観光施設の評価がどのように扱われるのか、興味がある。「当然、下がるのでしょう」と思われるかもしれないが、固定資産評価というのは、建前(法律の規定)は時価によると言いながら、実際には総務大臣の告示である固定資産評価基準なるものに牛耳られており、これを裁判所が無批判に追認しているのが実情であり、私も、10以上の不服裁判を争ってみたが、2勝8敗2引き分けといったところである。対象はゴルフ場のクラブハウスや店舗ビルであった。一体そのことと、このタイトルに何の関係があるかと思われるかもしれないが、実は、深い関係がある。 時々通る山梨県の甲州街道沿いにとても立派なパチンコ店があり、まるでお城のような作りだったが、地方の街道沿いのパチンコ店はどうやらそのビジネスが難しいようで、確か、10年以上前から廃業に追い込まれ、以後は空き家のような状態になっていた。そこを通るたびに、「まだまだ使える立派な建物なのに、もったいないな」と感じていた。 ところが、先ごろ久しぶりにそこを通りかかると、駐車場に車があり、「おや、またお店が開業したのか?」と思い、よく見ると、外国にその本籍のある宗教法人の看板があることに気づいた。そこで私は思わず、「なるほどな、最後はこうなるのが一つの流れか」と一人でつぶやいた次第である。 私が関わった百貨店が典型的なのだが、商業施設の場合は、その商売の思惑が外れたり(昔のボーリング場)、過剰供給がたたったり(ゴルフ場全般)あるいは、現在多くの地方都市で生じている物流制度の変革とモータリゼーションによる消費者の行動変化に伴う旧商業地区の壊滅的な衰退から、それにかかる施設の価値が大きく損なわれるという現象が生じている。しかし、それが、固定資産税における不動産(建物)評価では、ほとんど反映されないという問題が生じている。 実は、土地については、その価値の減少が反映されやすい仕組みになっておりそれが実行されているが、建物については、制度上の仕組みとしてはあるものの、実際には「建物の価値は、その建築費により決まるもので、年代による減価以外には、周りの環境に影響されない」がごとき扱いとなっているのが実情である。しかし、建物として立派でも、それを利用しようとする人がいなければ、価値がなくなる、減少するのは当然のことであり、これまでそうした考慮がほとんどなされてこなかったのは、単に、「人口増加、経済拡大」という右肩上がりの時代背景のなせる業であったにすぎない。そして、そうした時代は、とっくの昔に終わっているはずなのにである。 ここで、やっとパチンコ店の話となる。パチンコ点の施設は特殊であり、それをホテルやレストランその他の用途に変えることは簡単ではない。まして、誰も使えない施設となっても高い固定資産税をかけられているのでは、単なる物置(倉庫)として利用する訳にもいかない。多分、そうした背景から、何年もの間空き家であったと想像される。それを、最終的には宗教法人が購入したということになる。固定資産税がかからないからであろう。極めて論理的である。 このことから、市町村やそれらを指導する総務省は何を学ぶべきなのだろうか。不相当な評価をして空家を増やし(あるいは取壊しをすすめ)、その挙句に、宗教法人に取得されて、評価額に関係なく課税が出来なくなってしまっている。欲をかいて、結局は損をしていると云えよう。宗教法人以外は買えないという現状の固定資産評価実務の問題が暴露されているといって過言ではない。このように、今の固定資産評価制度、その運用は、全く時代遅れなものとなっている。 そして、それを改めようとする動きが全く見られないという異常さであり、これは大問題である。税という政治の根本の一つが、裁判所ですら見て見ぬ振りで済まされるようでは、我が国の政治制度に末期症状が出始めている、と危機感を持つ必要があろう。 |
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