ゴルフ場にかかる固定資産税 | ||||
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先日、不服審査を含めて大方6年もかかったゴルフ場の固定資産税についての裁判が終わった。ゴルフ場所在地の地方裁判所での判決(当方の一部勝訴)が、結局は、高裁、最高裁でもそのまま維持され、確定したという次第である。ゴルフ場ビジネスが過去20年間でどのような変遷を経たかはいまさら声にする必要もないであろうし、その税務上の評価の不合理さについても、改めて触れる必要もないと思うが、実際に6年もの期間を費やして感じたことを、少しお話ししたい。 ≪改めて感じる世間と裁判所のかい離≫ 不動産としてのゴルフ場自体の売買はその移転登記費用の問題から、ほとんど皆無に近く、その不動産価格の下落ぶりは直接的には統計化しにくいが、経営母体会社の売買事例からして、それが大幅に下落していることは誰も疑えないはずである。又、会社の売買価格とともに、もう一つの証左が会員権の暴落であり、ほとんど以前の10分の一以下の価格と言っていいほどである。 これらの事実は、ゴルフ場自体の価値の下落を如実に示していると思われる。特に、最盛期に名義書換料を、会員権価格の一割程度に改訂(値上げ)したクラブでは(それがほとんどだが)、現在では、会員権価格が名義書換料と同じ程度ならまだいい方で、それを大幅に下回っているような例があちこちに見られる。この姿は、時価相場を無視した評価で、固定資産税や不動産取得税が高止まりしている状況と瓜二つである。 本来なら、このようなばかげた行政の状況は、裁判所が、法的な処理として、早急に是正すべきもののはずであろうが、今回の不充分な判決内容といい、その審理に要する期間といい、とても期待するにはほど遠い状況である。何故、このような不合理が続いているのか、それこそが問題であろう。 ≪地方公共団体の有力な財源≫ 今回の例もそうだが、ゴルフ場の固定資産税は、その所在市町村の有力な財源になっており、裁判所は、何となく、そのことを気にしている気配がある。本来、そのようなことは、裁判官が気にすることではなく、もっと素直に、法律に従って「時価はいくらか」という問題に対してのみ回答をすればいいのだが、何故か、引っ掛かっているようなのである。同じことは、いわゆる、工業団地にも言えることで、ほとんど買い手がなく、実体としてはマイナス財産になってしまっているような土地(区画)が、いまだに当初の分譲価格で課税されているのも、同じような背景からであろう。財源の問題は、(裁判所が)法律をゆがめてまで賄う問題ではなく、政治や行政が智恵を出すべき問題であるはずだが、裁判所に持ち込まれると、妙に責任感を持ってしまっているように感じる。 ≪土地と建物の差≫ 実は、今回の裁判では、結果としては、建物の減額は認められたが、土地の減額は否定された。何故、そのようなことになったのか。表面上の理屈ではなく、裁判官の心理を慮ると、「建物には個別性があり、他への影響を遮断できるが、土地の評価減は(他のゴルフ場への)影響が心配だ」という辺りが真相ではないかと思われる。確かに、隣り合わせのゴルフ場もあり、片方の(土地)評価が下がれば、もう一方も下がらざるを得ないが、建物であれば、何とか別扱いの理屈が立つという配慮であろう。実は、裁判をしている最中に、3年ごとの評価替えの時期が来てしまい、どうしたわけか、土地については、大幅な減額評価が市町村により自主的になされた。私たちから見たら、「3年前の土地評価の誤りを自白した」のと同じようなものなのだが、裁判所は、何故かそうした事実には目をつぶり、「土地は正しいこととする。(その代わりに、少なくとも)建物を減額する(からそれで折れ合ってくれ)」とでも言った感じだったのであり、その後の上級審でもこの点には一切触れられていない。これは、あまりに気配りが過ぎるように思う。ことによると、土地評価の是正を認めれば、類似の裁判が続出すると心配をしているのであろうが、裁判所というものが「素直な判決」を出すことが明らかになれば、行政もそれを前提に評価を下すのであり、一時的な増加はともかく、長期的に見ればむしろ裁判沙汰を減少させるはずなのである。 むしろ、「裁判所は、行政の味方をしてくれる」との期待と、過去の実績があるからこそ、地方公共団体は、「たとえ筋が悪くとも、高止まりの評価で頑張らざるを得ない」というのが、今の実情である。 ≪結局≫ 結局のところ、今や、ゴルフ場とその所在地の市町村の関係は、ゴルフ会員権の保有者とゴルフ場経営会社の関係に酷似してしまっている。 ゴルフ場運営会社が、書き換え料をバブル時の価格に据え置き年会費を値上げしているため、その反動で、会員権価格がさらに暴落している状態だが、これは、市町村が固定資産税や不動産取得税を高止まりさせて、ゴルフ場の交換価値を下げているのと、経済的にはまったく同じ構図である。実は、別事件で、それまでゴルフ場だったところを、森林に戻す目的で買った人から、その不動産取得税としてゴルフ場の購入価格とあまり変わらないような額を請求されているというので、『いくらなんでも』ということで裁判をしている。読み通り、一審では敗訴しているので、これから控訴審で本腰を入れる予定である。会員権の書き換え料は、一応は、事業者が好きに決めるのであろうが、取得税や固定資産税は、法律では、市町村が自由に決めるのではなく、時価の一定割合と決まっているのに、この始末である。もし、このいびつさが行政の自主的改革や司法の判断で解消されないのなら、いっそのこと、こうした税金の税率は、ゴルフ会員権並みに、市町村が「好きに決められる」とする方がすっきりするのかもしれない。そして、みんなで悪口を言い合うことにより、適切?な相場に落ち着かせるという手法である。 課税基準として機能しない法律よりは、この方がかえって合理的とすら言える。 ところで、今後、地方を中心に、森林に戻されるゴルフ場が増えそうなのだが、その原因の一つが、あるいはことによるとその唯一の原因が、実態を無視した税金の高止まりであるとすると、結局、市町村は、目先の欲にかられて課税をし、ゴルフ場という大事な虎の子をなくしてしまっているのが本当のところである。そういえば、バブル期にリゾートマンションが乱立した苗場では、放置されて未納の管理費と固定資産税だけが積み上がっている部屋が山のようにあると聞く。高額の管理費の所為もあり、ほとんど一円の価値もないものにこれまた多額の税金をかけていたのでは、買手が現れないのは当然である。不動産は、ある意味、社会的な資産であり、それがいびつな課税実務の所為で、誰にも利用されずに放置され、朽ち果てていくというのは、あまりにひどい話である。 |
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